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意外と使いづらい 相続土地の「国庫帰属制度」

「親から土地を相続したけれど、遠くて行くこともないし、正直いらないんです‥」

そんなお悩みを抱える方が増えているようです。
特に多いのが、現在の居住地から遠く離れた土地を相続したケース

たとえば、東京に住むAさんが、東京からはかなり遠方にある実家近くの山林を相続した場合。
活用の見込みがないにもかかわらず、管理責任は一生続き、固定資産税も毎年かかる‥。

「負動産」という言葉が頭をよぎります。
このような悩みの解決策になるのではと期待されたのが、「相続土地の国庫帰属制度」です。

相続土地の国庫帰属制度とは

この制度は2023年4月にスタートしました。
相続した土地を手放したい人や望まないのに相続で土地を所有することになった人などが申請し、条件を満たせば国に所有権を引き渡せる制度です。
   →法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(2023年4月24日)

この制度を利用することで、相続人が不要な土地の管理や固定資産税の納税義務から解放され、行政は管理が不全な土地を減らせるというWinWinの関係になることが期待されました。

ところが実際には、この制度を利用する条件が厳しく、「思ったよりハードルが高い」という現実もあります。

利用の条件

ハードルの高さを示すものとして、国が「引き取ることができないケース」がいくつかあります。

申請できないケース

・建物がある土地
・他人が通行などで使っている土地
・境界が明らかでない土地
・土壌汚染されている土地
・抵当権などがある土地 など

たとえば、遠方の実家を相続した場合など、そもそも建物があるケースでは、この制度を利用することができないということです。
この制度を利用するには、建物を解体しなければなりませんが、それでは費用がかさんでしまい、元も子もありません。

承認できないケース

・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用や労力がかかる土地
・土地の管理や処分を阻害する残地物が地上や地下にある土地 など

つまり、国が引き取った場合に、管理や処分が面倒になりそうな土地は、そもそも引き取ることができないとしているのです。

費用負担

さらに、費用の負担も考慮する必要があります。

まず、申請にあたって土地1筆あたり14,000円の審査手数料がかかります。
これは申請が却下・不承認になっても返還されません。

申請が承認されて、国に引き取ってもらえることになると、土地の管理費用の一部を負担することになります。
10年分の負担金を一括で納付することになり、土地の地目や面積にもよりますが、最低でも20万円が必要となります。

利用実績の現実

法務省がこの制度の運用状況に関する統計を発表しました。
2025年3月31日現在のデータで、制度が始まってから2年間の実績ということになります。
   →法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(2025年4月28日)

申請件数:3,580件

帰属件数:1,486件
 つまり、申請があったうち41.5%が承認されたことになります。
 このうち、宅地は申請数の45%が承認されましたが、
 一方で山林は14%に留まっていて、地目によって大きな差があることがわかります。

却下件数:55件、不承認件数:54件、取り下げ件数:579件
 これらの数字から、申請しても「認められない」「途中で諦める」ケースが意外と多いことがわかります。

 相続した人にとっては、「管理がたいへんで、本当にいらない土地ほど、この制度の条件に合わない」
 という、皮肉ともいえる現実も見えてきそうです。

この制度が「意外と使いづらい」という状況が、制度の条件や実績からわかってきます。

制度に頼らない選択肢

相続した土地を手放したい時に、国庫帰属制度は選択肢の一つにはなりそうですが、使い勝手がよいとはいえません。
条件が合って、費用負担にも耐えらる場合は利用を検討するのもよいでしょう。

ただ、この制度を利用できそうにない場合は、他の選択肢を考えることになります。
・隣接地の所有者への譲渡
・自治体の空き地バンクの活用 など


まとめ

相続した人が困ってしまうような土地については、今回の「国庫帰属制度」も条件次第では利用が可能となりますが、そのハードルは高いといえます。

相続では相続した家族が困らないように、早め早めに対策を考えることが大切です。
ご自身の負担を減らし、残される家族の未来を守る相続対策を築いていきましょう。

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