コラム
コラム
SCROLL

親が元気なうちに確認 実家の登記簿「3つのポイント」

ゴールデンウィーク。久しぶりに実家に帰り、家族と食卓を囲む時間はかけがえのないものです。

しかし、ふと実家の古くなった壁や手入れの行き届かなくなった庭を眺めて、「この家、将来はどうするんだろう」と頭をよぎることはありませんか?

ちょうど4月から5月にかけては、役所から「固定資産税の納税通知書」が届く季節でもあります。使っていない空き部屋が増えた実家の維持費を見て、漠然とした不安を感じる方は少なくありません。

不動産相続において、最も大切なのは「急いで売るか・貸すかを決めること」ではなく、現状を正しく把握し「設計図」を描くことです。そして、その設計図の確固たる土台となるのが「登記簿(全部事項証明書)」です。

今回は、相続トラブルを未然に防ぐため、親が元気な今だからこそ、実家への帰省時にぜひ確認していただきたい登記簿の「3つのポイント」をプロの視点で解説します。


① 「名義」の確認:祖父名義や共有名義になっていないか

まず一番に確認すべきは、家の名義が「誰」になっているかです。 「親が建てた家だから、当然親の名義だろう」「ずっと親が固定資産税を払っているから親の持ち物だ」という思い込みは禁物です。

実は、登記を確認すると「すでに亡くなっている祖父(あるいは曾祖父)の名義」のまま放置されているケースが驚くほど多いのです。 この状態で親に相続が発生すると、手続きは「二世代・三世代分」をさかのぼる必要があります。

当時の相続人であった親の兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子ども(あなたから見た従兄弟)まで権利が移っていきます。結果として、会ったこともない親戚を含め、関係する相続人が10人以上に膨れ上がることも珍しくありません。

共有名義の罠

親の名義であっても、親の兄弟などとの「共有」になっていませんか? 共有名義の不動産は、売却や建替え、活用をする際に共有者「全員」の同意が必要です。一人でも反対したり、認知症で意思確認ができなくなったりすれば、実家は一切の手出しができない「動かせない資産」と化してしまいます。

    まずは「誰の不動産なのか」、そして「単独名義か、共有名義か」というスタートラインを明確にしましょう。

    ② 「住所」の確認:登記と現住所は一致しているか

    次に確認したいのが、登記簿に記載された所有者の「住所」です。 ここには、今まさに注意が必要な大きな法改正がからんでいます。

    2026年4月1日から「住所変更登記の義務化」が施行されました。 不動産の登記簿上の住所は、役所に転居届を出しても自動的には切り替わりません。

    これまで「引っ越しをしても、登記の手続きはお金もかかるしそのままでいい」と放置されがちでしたが、今後は住所変更から2年以内に登記をしないと、5万円以下の過料(ペナルティ)の対象となる可能性があります。

    手続きがストップするリスク

    住所のズレを放置したまま相続や売却を迎えようとすると、「登記簿上の人物」と「現在の人物」が同一であることを証明するために、過去の住所のつながりを示す書類(住民票の除票や戸籍の附票など)が必要になります。しかし、役所の書類には保存期間があるため、何度も引っ越しを繰り返しているとつながりが証明できず、手続きが非常に難航するケースがあります。

      「あとでまとめてやればいい」は通用しません。現在の住民票の住所と完全に一致しているか、必ずチェックしてください。

      ▼ 関連コラム 住所が違う場合の具体的な対処法や手続きの流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。 「登記の住所と現住所が違うときの対処法」

      ③ 「権利」の確認:抵当権が残っていないか

      最後に見落としがちなのが、過去の住宅ローンに伴う「抵当権」などの権利関係です。 「家のローンは30年前に払い終わっているから無借金だ」という場合でも、登記簿からその記録が消えているとは限りません。

      住宅ローンを完済すると、銀行から「抵当権を抹消するための書類一式」が入った分厚い封筒が送られてきます。しかし、多くの方が「支払いが終わったからもう安心」と、その封筒を開けずに引き出しの奥へしまい込んでしまいます。

      抵当権の抹消登記は、自分(または司法書士)で法務局へ申請しない限り、勝手に消えることはありません。

      実際にあった事例では、いざ売却しようとした際、大昔の抵当権が残ったままになっており、以下のようなトラブルで手続きが数ヵ月ストップしてしまいました。

      • 当時の金融機関が合併で名前も変わり、窓口がどこか分からない
      • 銀行から届いていたはずの解除書類が紛失しており、再発行の手間がかかる
      • 当時の保証会社がすでに解散している

      古い手続き漏れは、時間が経つほど「パズル」を解くのが難しくなります。親が元気で、当時の記憶や書類が残っているうちに整理しておくのが最も賢明な対策です。


      登記簿はどうやって取得する?

      「確認の重要性はわかったけれど、どうやって見ればいいの?」という方へ。

      登記簿(全部事項証明書)は、その不動産の所有者本人でなくても、誰でも取得することができます。

      1. 法務局の窓口へ行く 全国どこの法務局でも、全国の不動産の登記簿を取得できます。費用は1通600円です。
      2. オンラインで取得する 法務局の「登記情報提供サービス」を利用すれば、インターネット上でPDFとして閲覧・保存が可能です(1通330円)。

      取得の際には、普段使っている住所(住居表示)ではなく、「地番(土地の番号)」と「家屋番号(建物の番号)」が必要です。これらは、毎年届く「固定資産税の納税通知書(課税明細書)」に記載されています。実家に帰省した際、親と一緒にこの通知書を見ながら確認するのが最もスムーズな方法です。


      まとめ

      親が元気なうちに、登記簿という客観的な事実を確認できるかどうか。それだけで、将来の相続の手間と、家族間のストレスは劇的に変わります。登記簿は、いわば実家の「健康診断書」です。

      実家の登記簿で確認すべきポイントは、次の3つです。

      ◯ 名義は誰になっているか
      ◯ 登記上の住所と現住所は一致しているか
      ◯ 抵当権などの権利が残っていないか

      登記簿は、不動産の「設計図」ともいえます。このゴールデンウィーク、実家の未来を「設計」する第一歩を、登記簿の確認から始めてみませんか。


      【関連コラム】

      🟢 登記の住所と現住所が違うときの対処法

      🟢 「実家じまい」を成功させる5つの準備

      🟢 実家相続の落とし穴 家なき子特例の明暗

      お問い合わせ LINE