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終活で使える「家族サポート証券口座」

「終活」というと、まずは終活ノート(エンデインングノート)を作り始めた。あるいは所有している不動産について対策を考えている。あるいは生命保険を活用した相続対策を検討している。といった方が多いと思います。

そうした中でもっとも気になるのは認知症です。
認知症になってしまうと、そこから先の資産の移転や不動産売却、さまざまな契約行為などが原則、できなくなってしまうからです。

そのリスクの一つが証券口座の凍結です。
証券口座についても、口座を保有する人が認知症などで判断能力が低下した場合に原則、取引ができなくなります。家族が代わりに出金することもできません。

このようなリスクに備えて、これまでは家族信託や任意後見制度などがありました。
そこに「家族サポート証券口座」という新しい制度が加わります。

今回は、「家族サポート証券口座」の仕組み、家族信託や任意後見制度との違い、終活での活用法などをわかりやすく解説していきます。


家族サポート証券口座の仕組み

「家族サポート証券口座」とは、証券口座を保有する本人の判断能力があるうちに、信頼できる家族を「サポート役」として決めておくことで、将来、本人が認知症などで判断能力が低下した際の証券口座の管理・運用に備える仕組みです。

サポート役にすることができる家族は、国内に住む配偶者か子または孫です。これらの人がいない場合は、本人の兄弟姉妹やおい・めいもサポート役になることができます。

本人が元気なうちに、本人と証券会社、サポート役(代理人)となる家族の3者で、本人の判断能力が低下した際、代理人がどのように資産を管理・運用するか決めて、契約を結びます。

この契約では、証券口座の資産で代理人が株式や投資信託を運用することや、売却すること、あるいは解約や出金することなどを決めておくことができます。
契約は本人と代理人との委任契約となり、公正証書で作成するルールになっています。

この制度の大きな特徴は、代理人が資産の売却や出金だけでなく、新たな買い付けなどの運用ができることです。
本人が元気な間は本人が引き続き口座での資産の運用を行い、認知症などで判断能力が低下したら、代理人が証券会社に届け出ることで、代理人が口座の取引を引き継ぎます。

本人が「もしも」のときに、スムーズに資産の管理・運用を引き継げるというわけです。

この仕組みは2025年2月に日本証券業協会が要綱を公表しました。
早ければ2025年の夏ごろには導入する証券会社が出てくるのではないかとみられます。
   →日本証券業協会「家族サポート証券口座について」(2025年2月)

終活での活用メリット

高齢者にとって「家族サポート証券口座」は、認知症に備える現実的な「終活ツール」となります。
判断能力が低下した場合の証券口座の凍結リスクを避けることができるうえ、家族信託などに比べて手続きが簡易で、費用を抑えることもできます。

本人の医療費や介護費に充てたいなどのニーズが発生した際にも、代理人が売却・出金することでスムーズに対応することができます。

また、相続前に証券口座の資産を把握しておくことができるので、円滑な相続手続きにもつながります。

たとえば、証券口座で老後資金として投資信託を運用していたものの、認知症を発症。子どもたちがその証券口座の存在を知らなかったために資産が放置されてしまい、相続が発生してからようやく見つかったということがありえます。

このような事態を防ぐには、終活を進めるなかで、元気なうちに家族との情報共有をして、「家族サポート証券口座」の制度を利用するなど、意識して対応することが肝心だといえます。

ほかの制度との違い

認知症への備えに関する制度には、「家族信託」「任意後見」「法定後見」もあります。
これらの制度との違いを比較してみます。

「家族サポート証券口座」は、対象が証券口座の資産に限定されるものの、導入が簡易で家族の関与もしやすく、費用も抑えられることが特徴です。

元気なうちに準備しておくことができることも「終活」に適しています。

家族信託や後見制度については、こちらのコラムをご参照ください。
   →「家族信託の費用は安いのか高いのか」

利用の際に注意すること

一方で、「家族サポート証券口座」にはいくつかの注意点があります。

✔️ 対象が証券口座内の資産に限られる
  預貯金や不動産などの資産については別の対策が必要となります。
  契約時の費用はかかるものの、家族信託は預貯金や不動産なども対象とすることができます。

✔️ あくまで生前の管理ツール
  相続の際には、証券口座の資産は相続財産となり、通常の相続手続きをすることになります。


終活では「お金の見える化」を

終活は人生の終盤を自分らしく生き、家族に安心を残すための準備です。
中でも証券口座などの金融資産は、状況によっては、残された家族が存在を知らなかったなど、意外な「落とし穴」になってしまう可能性があります。

「家族サポート証券口座」は、認知症による資産凍結を防ぎ、家族による見守りと柔軟な対応を可能にする、新しい選択肢です。

そして「今から準備できる」終活でのツールなのです。

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