都会と田舎 空き家の「実態」はこんなに違う

お盆や年末に実家へ帰省したとき、こんな場面に出会ったことはありませんか。
庭の雑草は腰の高さまで伸び、雨どいは歪んで、家の中はカビの匂いが漂う……。
「この家、親が元気なうちはいいけれど、誰も住まなくなったらどうする?」
兄弟姉妹でそんな会話を交わす人が増えています。
いま日本には約900万戸の空き家が存在し、空き家率は13.8%に達しました。7軒に1軒が空き家という状況です。
ただ、「空き家」と一口に言っても、都会と田舎ではその姿がまったく違います。ここでは東京都と地方のデータをもとに、「空き家の二極化」とその背景について見ていきましょう。

東京の空き家の実態
東京都は日本の人口減少が進む中でも、人口が増えていることが指摘されています。人口が集中していることから、住宅需要も大きな地域です。住宅の数自体も多いので、空き家の数も相対的に大きくなります。
全国の空き家数は約900万戸ですが、東京の空き家数は約90万戸と10%を占めています。また5年前と比べて8.7万戸増えていて、今後もさらに増えるとみられています。
→出所:東京都住宅政策本部「東京都の空き家の現状」
◆ 東京23区:空き家数ベスト5
順位 | 区名 | 空き家数 |
1位 | 世田谷区 | 5.9万戸 |
2位 | 大田区 | 4.9万戸 |
3位 | 足立区 | 4.4万戸 |
4位 | 板橋区 | 4.2万戸 |
5位 | 練馬区 | 4.0万戸 |
◆ 東京23区:空き家率ベスト5
順位 | 区名 | 空き家率(平均10.9%) |
1位 | 豊島区 | 13.9% |
2位 | 港区 | 13.7% |
3位 | 荒川区 | 12.9% |
4位 | 千代田区 | 12.6% |
5位 | 中野区 | 12.1% |
東京の空き家の特徴
東京の空き家の課題はやはり数の多さです。空き家数1位の世田谷区だけでも5.9万戸と、全国の市区町村でも突出しています。住宅数が多いため、空き家数も多いという構図です。
一方、「空き家率」でみると、東京の平均の空き家率は10.9%で、全国平均の13.8%を下回っています。ただ、「空き家率ベスト5」でも明らかなように、豊島区や港区は全国平均と同程度となっていて、東京23区内でも差があります。ちなみに空き家率が最も低いのは江東区で9.0%です。
豊島区は単身向け賃貸物件の空室率が高く、港区は投資用マンションに入居していないケースが多いとみられています。
では、なぜ東京で空き家が増えるのでしょうか。
① 相続後の停滞
相続発生後に兄弟姉妹など相続人の間で意見がまとまらず、「とりあえずそのまま」となっているケースが多いようです。
② 賃貸物件の空室
空き家率1位の豊島区のように、単身向けマンションやアパートの供給過剰による空室が目立ちます。
③ 新築志向
東京では「新築マンション信仰」が根強く、中古住宅の流通が鈍い傾向があります。良質な中古住宅でも売却が進まず、空き家として計上されるケースがあります。
こうした事情を踏まえると、東京の空き家は「売れるはずなのに動かない」ことが多いと言えそうです。
地方の空き家の特徴
都道府県別に空き家率をみてみると、上位の県では空き家率が20%を超えていて、「5軒に1軒が空き家」になっています。
◆ 都道府県別の空き家率ベスト5
順位 | 都道府県 | 空き家率 |
1位 | 徳島県 | 21.3% |
2位 | 和歌山県 | 21.2% |
3位 | 鹿児島県 | 20.5% |
4位 | 山梨県 | 20.4% |
5位 | 高知県 | 20.3% |
地方の空き家の特徴
地方の空き家の特徴は、「売れない」「壊せない」「直せない」という三重苦です。
① 需要がない
誰も住まなくなった住居を売却しようとしても、過疎地では需要がないため買い手が見つかりません。
価格を下げても売れないということになってしまいます。
② 修繕コストが高い
大きな戸建てが多いため、屋根や水回りの補修にかなりのコストがかかります。中には数百万円かかるケースもあります。
③ 解体も負担
解体しようとしても、費用がかかるため、結局、そのまま放置するということが多いようです。
また解体して更地にすると、住宅用地の固定資産税が6分の1になる特例が解除されてしまうため、解体処分が進まないという背景もあります。
結果として、地方では「放置」しか選択肢がないという世帯が少なくないのです。
「相続放置」という共通の課題
都会でも地方でも空き家が増える背景には「相続放置」という共通の事情もあります。
⚫︎ 名義変更をしていない
相続登記をしていないため、売却も活用もできないというケースです。
⚫︎ 相続人の意見の対立
たとえば、「売りたい長男」と「思い出を残したい長女」で意見が平行線となってしまうケースです。
⚫︎ 遠方の物件
相続した家が遠方にあり、物理的に管理ができず、放置されてしまうケースです。
このような「相続放置」による空き家は、都会・地方を問わず増加しています。
2024年から相続登記が義務化されましたが、何十年も前の相続で登記が放置されている件数は膨大とみられています。解消されるまでにはかなりの時間がかかるといえます。
◆ 空き家「二極化」の実態
観点 | 東京 | 地方 |
空き家数 | 圧倒的に多い | 戸数自体は少ない |
空き家率 | 10〜13% (全国平均13.8%より低め) | 20%前後 (全国平均を大きく上回る) |
主な要因 | 相続放置・賃貸空室 | 過疎化・需要消失・解体コスト |
リスク | 近隣トラブル・経済的非効率 | 倒壊・地域全体の衰退 |
まとめ
都会と田舎で空き家の実態は違っても、共通して言えるのは「放置すればするほど問題やリスクが大きくなる」ということです。
都会の場合は、空き家数が多いことが課題です。相続登記の義務化や相続トラブルで問題が表面化することが多いといえます。
地方の場合は空き家率が高いことが課題です。空き家の増加は地域全体の安全や価値を下げてしまうことにもつながります。
だからこそ、「うちは大丈夫」と思わず、早めに話し合いをして対策を始めることが大切です。
✅ 相続前に「どうするか」を家族で話しておく
✅ 地方の家なら「空き家バンク」や「移住促進策」などを調べる
✅ 都市の家なら「リフォームして賃貸」や「早期の売却」を検討する
「まだ先のこと」と思っていても、空き家問題は徐々に静かに忍び寄ります。
都会でも田舎でも、「早めに動く」ことが重要となります。
