空き家を資産に変える「定期借家契約」の活用

全国で増え続ける空き家。
総務省の住宅・土地統計調査によると、空き家はすでに全国で900万戸を超え、今後も増加が見込まれています。
その背景には、相続で引き継いだ実家や親族の家を使わずに放置するケースが多いことがあります。
しかし、空き家をそのまま持ち続けることは、単に「使っていない」だけでなく、固定資産税や管理費、劣化リスクといったコストを抱え続けることを意味します。加えて、空き家を放置すれば、防犯・防災上のリスクや、行政から「管理不全空家」に指定される可能性もあります。
そんな中、空き家を上手に活用しながら将来の自由度を保つ方法として注目されているのが、「定期借家契約」です。一定期間貸して家賃収入を得つつ、契約満了後は確実に物件を返してもらえるだけでなく、将来の相続発生時には、相続税評価額の引き下げによる税負担軽減の効果も期待できるのです。

定期借家契約とは
定期借家契約は、2000年の借地借家法改正で導入された制度で、普通借家契約と違い、契約期間の満了によって必ず終了するのが特徴です。更新はなく、期間は当事者間の合意で自由に設定できます。1年未満の契約も可能です。
普通借家契約では、貸主が「自分で使いたい」などの事情があっても、「正当事由」がなければ契約を終了できず、事実上「半永久的」に貸し続けることになりがちです。
これに対して定期借家契約なら、期間終了後は確実に返還されるため、将来の売却や自己利用の予定を立てやすいという大きなメリットがあります。
普通借家契約との比較

空き家を定期借家契約で貸すメリット
1. 家賃収入で維持費をまかなえる
空き家でも固定資産税や火災保険料は発生します。さらに定期的な修繕や草木の手入れにも費用がかかります。
これらのコストを家賃収入でカバーできれば、経済的な負担を軽くすることができます。
2. 建物が傷みにくくなる
空き家をそのままにしておくと、通気や換気がされず湿気がこもり、カビや構造材の劣化が進みます。適切に管理するためには、それなりの手間がかかることになります。
一方、人が住むことで日常的に換気・通水が行われ、建物が痛みにくくなり、結果として建物の寿命を延ばすことにつながります。
3. 将来の選択肢を確保できる
たとえば「5年後に子どもが戻ってくる予定」「数年後に売却予定」など、ライフプランに合わせた期間設定が可能です。
契約終了時に確実に返還されるため、計画的な資産活用ができます。
4. 相続税の負担を軽減する可能性
土地の相続税評価額は利用状況によって変わります。空き家をそのまま持っている場合は、「自用地」として評価されますが、賃貸にすると、「貸家建付地」として評価されることとなり、評価額が下がります。
賃貸にしているタイミングで相続が発生した場合、結果として、相続税額を減らせる可能性があります。
数字でみる軽減効果
たとえば、次のようなケースでは、
・面積:100㎡
・路線価:50万円
・借地権割合:70%
・賃貸割合:100%(建物すべてを貸している)
・借家権割合:30%(全国一律)
①「自用地」評価額 = 5,000万円
|計算式:路線価 × 面積 = 50万円 × 100㎡ = 5,000万円
②「貸家建付地」評価額 = 3,950万円
|計算式:自用地評価額 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
= 5,000万円 × ( 1 – 0.7 × 0.3 × 1 )= 5,000万円 × 0.79 =3,950万円
評価額が1,050万円(5,000万円 – 3,950万円)減ります。
相続税率が20%の場合だと、相続税額が210万円軽減されることになります。

注意点と落とし穴
1. 家賃収入は課税される
家賃収入は不動産所得として課税されます。
賃料から必要経費(修繕費・固定資産税・管理費など)を差し引いた利益が課税対象となり、確定申告が必要です。
2. 固定資産税は変わらない
土地について、固定資産税が6分の1になる住宅用地の特例が適用されている場合、空き家でも賃貸でも税額は原則変わりません。
ただし、空き家にしていて管理が不十分なまま放置しているような場合には、行政から「管理不全空家」、さらには「特定空家」に指定されることで、住宅用地の特例の適用を除外されてしまうことがあるので注意が必要です。
→関連コラム「『その他空き家』という本当の課題」
3. 中途解約は原則できない
定期借家契約は中途解約が原則できません。期間満了まで貸し続けることになります。
どうしても必要な場合は、契約時に中途解約の特約を入れるか、合意解除することが必要となります。
4. 相続直前の契約は注意
相続税対策として相続の直前に契約しても、実態が伴わない場合は税務署に否認される可能性があります。
計画的に始めることが重要です。
まとめ
空き家は、放置すればコストとリスクの塊ですが、定期借家契約を活用すれことで、
・家賃収入で維持費をまかなう「守り」
・相続税評価額を下げる「攻め」
このように両面でメリットを得られます。
さらに、期限を決めて貸せるので、将来のライフプランや市場環境に合わせた柔軟な対応が可能となります。
「売るか・貸すか・そのままか」で迷っている空き家も、まずは期間限定で貸してみるという選択肢をこのコラムでは解説しました。
それは単なる延命策ではなく、資産価値を守り、家族の将来を見据えた戦略的な不動産活用となります。
