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実家の片付けは、不動産価値から逆算する

親が亡くなったあと、あるいは施設に入ることが決まったあと。
多くのご家庭で最初に始まるのが「実家の片付け」です。

「とにかく家を空っぽにしよう」「業者を探そう」「思い出の品を整理しよう」
その行動自体は間違いではありません。しかし、結果として数百万円の差につながることがあります。たとえば、相続した実家を売却する際の特例を使うことで、税額が大きく変わるケースです。

片付けは大切な作業です。しかし、不動産相続という視点で見ると、それは「最初の作業」ではなく、「最後の工程」であることも少なくありません。

実家の片付けは、不動産価値から逆算する。

その視点を持てるかどうかが、相続後の負担と手取りを大きく左右します。


実家はいくらで売れるのか|まずは査定で相場を知る

実家の片付けを始める前に、最初に確認すべきことがあります。その家はいくらで売れる可能性があるのか。感情の整理よりも先に、価格の整理です。

不動産会社に査定を依頼すれば、おおよその市場価格は把握できます。ここで重要なのは、「売れるかどうか」ではなく、「どう評価されるか」です。大きく分けると、次の3つのタイプに分類できます。

1.土地に値がつく物件

築年数が古く、修繕歴が乏しく、旧耐震基準(1981年〈昭和56年〉5月31日以前)の建物である場合、建物はほとんど評価されず、「土地としての価値」で価格が決まることがあります。

この場合、買主は解体前提で検討します。つまり、室内を完璧に片付け、内装を整えても、価格に反映されにくいということです。

2.建物に価値が残る物件

築年数が比較的新しく、耐震基準を満たし、リフォーム履歴がある場合は、建物付きでの売却が可能なケースがあります。

この場合は逆に、解体してしまうと価値を壊すことになります。必要なのは「全部捨てる」ことではなく、「印象を整える片付け」です。

3.リフォーム再販が見込める物件

エリアによっては、古家をリフォームして再販する業者の需要があります。この場合、間取り・設備・建具などが活かせるかが重要です。不用意な撤去は、再販価値を下げることもあります。

価格を知らずに片付けることは、設計図なしで工事を始めるのと同じです。

まずは価格と評価の根拠
そこから逆算して、出口戦略と片付け方法を考えていきます。

相続した実家の「出口戦略」|売却・更地・賃貸で片付けは変わる

実家の片付けを考えるとき、不動産としての価格を把握をしたら、次に整理すべきなのは、その家をどうするかという「出口戦略」です。

不動産相続の「出口」は、大きく分けて次の3つです。

1.そのまま売却する

もっとも多い選択肢が、売却です。この場合、重要なのは「スピード」です。

相続した実家の売却で活用できる可能性があるのが、「空き家の3,000万円特別控除」です。一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除することができます。

ただし、「相続があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却」という期限があります。つまり、相続から3年目の年末までという時間制限があるので、スピードが重要となります。
   →関連コラム「相続空き家を売るなら3年以内がお得」

価格が低い物件でも、この特例の有無で手残りが大きく変わります。

税額差の具体例

下記のケースで、試算してみます。
 ・売却価格:4,000万円(長期譲渡)
 ・取得費:200万円(概算額=売却価格の5%)
 ・譲渡益:3,800万円(試算のため、諸費用等は考慮しない)

■ 特例を使える場合
 3,800万円 – 3,000万円(特別控除額) = 800万円
 →税額:約160万円(800万円 × 約20%)

■ 特例を使えない場合
 →税額:760万円(3,800万円 × 約20%)

 ・差額は約600万円

もちろん実際には諸経費等もありますが、期限の違いだけで税負担が数百万円変わることは少なくありません

※なお、旧耐震建物の場合は、そのまま売却してもこの特例は受けられません。「更地にして売る」か「耐震基準を満たすリフォームをして売る」ことなどが条件となるため注意が必要です。

2.更地にして売却する

価格評価が「土地に値がつく物件」の場合、更地にして売却する選択もあります。
このときに気をつけたいのが、「二重コスト」です。

先に遺品整理で中身をすべて撤去し、その後に解体するという方法を取った場合に、遺品整理と解体でそれぞれ費用がかかります。

しかし実務上は、中身を残したまま一括解体した方が費用を抑えられるケースもあります。先に片付けを進めてしまうと、解体業者との交渉余地がなくなり、結果的に支出が増えることがあります。「きれいにしてから壊す」が常に合理的とは限りません。

たとえば、遺品整理業者に30万円、解体業者に200万円と別々に支払うより、解体業者に一括で任せて、210万円で済むといったケースです。

ただし、注意点もあります。液体(醤油・洗剤など)、スプレー缶、消火器、タイヤ等は別途処理費用がかかるのが一般的です。「解体時に何でもそのまま処理できる」わけではありません。

価格が土地中心なのかどうかを知らずに片付けると、無駄な出費が生じてしまいます。

3.実家を賃貸に出す

価格が一定以上あり、立地条件が良い場合は、賃貸に出す選択肢もあります。
この場合、全撤去が前提ではありません。家具付きで貸す方法や、最低限の修繕で貸す方法もあります。

一方、賃貸は「残す」という判断だけではなく、管理責任を引き受けることを意味します。
 ・固定資産税、都市計画税
 ・修繕費
 ・管理手数料
 ・空室リスク

空き家管理を業者に委託する場合には、月に数千円〜3万円程度が目安となります。年間で数万円〜36万円程度。「残す」という判断は、継続的なコストを引き受けることでもあります。

価格が低く、修繕費が高い物件を感情だけで保有すると、管理コストが積み上がる可能性があります。

これら3つの出口の共通点は一つ。「片付けは価格と出口によって変わる」ということです。だからこそ、実家の片付けは「不動産価値から逆算」する必要があります。

業者の選び方|買取対応と見積もりで差が出る

では、実際に片付けを進めるとき、遺品整理業者や解体業者をどのように選べばよいのでしょうか。「安いかどうか」だけではありません。ポイントを整理します。

1.出口を共有してから見積もる

まず大切なのは、その家をどうする予定なのかを業者に伝えているかどうかです。売却前提なのか、更地にするのか、賃貸に出すのか。

この前提が違えば、撤去の範囲も処分方法も変わります。単純に「全部空にしてください」と依頼すると、後から「そこまでやらなくてもよかった」ということが起きます。

2.買取対応があるかどうか

次に確認したいのが、不用品の買取対応があるかどうかです。古家具、建具、骨董品、レトロ家電などは、専門のマーケットがあり、値が付く可能性があります。

たとえば、撤去費用が80万円だとして、不用品の買取で20万円の値が付けば、実質の負担は60万円になります。この数字は大きくないように見えても、出口戦略全体では意味のある差です。

3.中身込み解体という選択肢

更地にすることが決まっている場合、先に中身をすべて撤去するのが必ずしも最適とは限りません。解体業者によっては、家財を含めて一括で処分・解体した方が総額を抑えられるケースもあります。

先に片付けを完了させてしまうと、この選択肢は消えてしまいます。

4.許可と追加費用の確認

業者が一般廃棄物収集運搬の許可を持っているか、追加費用が発生する条件などは、見積もりの際に必ず確認します。安い見積もりが、最終的に高くつくこともあります。

ここまで見てきたように、片付けは単なる作業ではありません。それは不動産相続の一部です。だからこそ、作業の前に、判断が必要となるのです。

感情を否定する必要はない|親の資産を守るという視点

実家の片付けは、感情の整理でもあります。
思い出の品を前にすれば、時間がかかるのは当然です。無理に感情を捨て去る必要はありません。

ただし、出口を決めることは、親が残してくれた資産を最大限に守る行為でもあります。

何を残し、何を手放すのか。基準が明確になることで、供養や整理も進みやすくなります。逆算は、冷たい判断ではありません。むしろ、後悔を減らすための整理です。

実家の片付けは「作業」ではなく「価格と出口の判断」

相続した実家は、まず「いくらで評価される不動産なのか」を知ることから始まります。
 ・土地に値がつくのか
 ・建物に価値が残っているのか
 ・賃貸として成り立つのか

この価格の把握がないまま片付けを進めると、解体すべきでない家を壊してしまったり、価格に反映されない整理費用をかけてしまったり、あるいは特例の期限を逃して数百万円の税負担を背負うことになってしまったり。そんなことにもなりかねません。

そのうえで、出口を決めます。
 ・売却するのか
 ・更地にして処分するのか
 ・賃貸に出して保有するのか

出口によって、片付けの範囲も費用もタイミングも変わります。そして、空き家の3,000万円特別控除には期限があり、空き家管理には継続的なコストが発生します。

価格と出口を先に決めることは、冷たい判断ではありません。親が残してくれた資産を、もっとも合理的な形で守るための整理です。

いま片付けようとしているその家は、「いくらの家で、どうする予定の家」ですか。
作業の前に、価格と出口の確認を。それが、相続した実家で後悔しないための基本です。

迷いがある場合は、早い段階で専門家に確認することも一つの方法です。

片付けは感情の問題。しかし相続は、判断の問題でもあります。その順番を間違えないことが、結果として家族の負担と後悔を減らすことにつながります。


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