コラム
コラム
SCROLL

地代を払いたいのに払えない…借地人が知っておきたい「地代の供託」

地主が変わったので、今後は別の方法で地代を支払ってください。

これは実際に起こった話です。

多くの場合は、新しい地主から振込先が案内され、これまでどおり銀行振込で地代を支払うことができます。しかし、中には振込先が示されない、一方的に支払方法の変更を求められるなど、借地人として戸惑うケースもあります。

また、地主から地代の値上げを求められたものの、その金額に納得できず、従来どおりの地代を支払いたいというケースもあるでしょう。

「地代を払いたいのに払えない。」

そんな状況を放置してしまうと、滞納と誤解され、契約が解除されるのではないかと不安になる方も少なくありません。

このような場合に、借地人の権利を守るための制度の一つが「地代の供託」です。

今回は、地代の供託とはどのような制度なのか、どのような場面で利用できるのか、そして手続きの流れや利用する際の注意点について、わかりやすく解説します。


そもそも「地代の供託」とは?

供託とは、地代を支払う意思があるにもかかわらず、何らかの理由で地主へ支払うことができない場合に、法務局へ地代を預ける制度です。

例えば、地主が地代の受け取りを拒否している場合や、地主が変わったにもかかわらず振込先が示されず、支払先が分からない場合などがこれにあたります。

また、地主から地代の値上げを求められたものの、その金額に納得できない場合には、借地人は従来どおりの地代を供託することがあります。

このように供託は、「地代を支払わないため」の制度ではありません。

「きちんと支払いたい」という借地人の意思を守るための制度なのです。

ただし、供託が認められるかどうかは、その時々の事情や法律上の要件によって判断されます。安易に自己判断せず、必要に応じて専門家へ相談することも大切です。

地代の供託は意外と簡単 オンラインで手続きができる

「供託」と聞くと、法務局まで出向き、複雑な手続きをしなければならないというイメージを持つ方も多いでしょう。

しかし現在では、法務省の「かんたん登記・供託申請」を利用すれば、パソコンやスマートフォンから供託の申請を行うことができます。
   →「かんたん登記・供託申請」(法務省)

申請内容に不備がなければ受理され、不備がある場合には法務局から補正の連絡があります。補正が完了して受理されると、供託金を納付します。

納付は金融機関の窓口でもできますが、Pay-easy(ペイジー)を利用すればオンラインで納付することも可能です。

このように、現在では申請から納付までオンラインで完結できるため、基本的には法務局へ足を運ぶ必要はありません。

供託した後はどうなる?

供託が完了すると、「これで終わり」と思われるかもしれません。しかし、実際にはその後も一定の手続きが続きます。

地主には供託したことが通知されます

供託金が納付されると、法務局から地主に対して「供託通知書」が送付されます。

地主はその通知を受けることで、借地人が供託を行ったことを知ることになります。

地主は供託金を受け取ることができます

地主は、法務局で所定の手続きを行うことで、供託金の払渡しを受けることができます。

つまり、供託で法務局が預かった地代を地主が受領するためには、法務局で手続きをすればいいわけです。

借地契約がなくなるわけではありません

供託は、地代を支払うための方法の一つです。

そのため、供託をしたことだけを理由に借地契約が終了したり、借地権が失われたりするものではありません。

供託は「1回だけの手続き」で終わるとは限りません

地主との関係が改善されず、通常どおり地代を支払えない状況が続く場合には、その後の地代についても、供託を続けることになります。

そのため、供託を始めた後も、地主とのやり取りや供託の記録を継続して保管しておくことが大切です。

利用する前に知っておきたい3つの注意点

地代の供託は、借地人の権利を守るための大切な制度です。しかし、「困ったらすぐ供託すればよい」というものではありません。利用する前に、次の3つの点を確認しておきましょう。

① 供託には法律上の要件があります

供託は、どのような場合でも利用できるわけではありません。

例えば、地主が受け取りを拒否している場合や、支払先が分からない場合、地代の増額をめぐる争いがある場合など、法律上の要件を満たすことが必要です。

「支払いたくない」という理由だけで供託することはできません。

② 支払う意思を記録に残しておきましょう

供託を行う前には、地主へ支払う意思を伝え、振込先の確認や受領の依頼を行うことが大切です。

メールや書面など、やり取りを記録に残しておくことで、「地代を支払う意思があった」ということを客観的に示す資料になります。

③ 判断に迷う場合は専門家へ相談しましょう

供託が適切かどうかは、契約内容や相手方とのやり取りなど、個々の事情によって判断が分かれることがあります。

判断に迷う場合には、弁護士や司法書士などの専門家へ相談したうえで手続きを進めると安心です。


まとめ

地代を払いたいと思っていても、地主の変更や受け取りの拒否、地代の増額をめぐるトラブルなどにより、思うように支払えないことがあります。

そのような場合に、借地人の権利を守る方法の一つが「地代の供託」です。

現在では、パソコンやスマートフォンを利用してオンラインで申請でき、納付もペイジーを利用すれば自宅などから手続きを行うことができます。

ただし、供託には法律上の要件があり、状況によって適否が異なります。大切なのは、「支払いたい」という意思をきちんと示し、状況に応じて適切な方法を選択することです。

ヴェルダントでは、借地・底地に関するご相談も承っています。地主との交渉や地代の問題でお悩みの方は、一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。


次回予告

借地人にとって、地代の値上げと並んで多い相談が、「借地権を売ってほしい」「底地を買わないか」といった売買に関する話です。

地主や不動産会社から突然提案されることもありますが、その場で結論を出す必要はありません。

次回は、「借地権を売ってほしいと言われたら? 借地人が確認したいポイント」をテーマに、交渉で押さえておきたいポイントや注意点をわかりやすく解説します。


<関連コラム>

⚫︎ 地代の値上げと言われたら? 借地人がまずは知っておきたいこと

⚫︎ 地主が変わった…借地人が知っておきたい3つのこと

⚫︎ 相続の前に知っておきたい 底地と借地権の評価

⚫︎ 借地権の相続はたいへんって本当?

お問い合わせ LINE