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古家つき土地の相続 路線価から見える盲点

「築50年以上の実家。ボロいから相続税も大したことないだろう」

そんなふうに考えている方は、要注意です。
実は、建物が古いことと、相続税評価が低くなることは、必ずしもイコールではありません。

特に都市部の「古家つき土地」の場合、建物の価値はゼロに近くても、土地の評価額が高くなるケースが多いのです。
背景にあるのは土地価格の上昇ですが、じつは、そのカギを握っているのは「路線価」です。

今回は、古家つきの不動産を相続する際に見落とされがちな「評価の盲点」について、わかりやすく解説します。


古家の価値は低くても、土地の評価は別

まず押さえておきたいのは、相続税評価が「建物」と「土地」は別々だということです。
評価の方法がそれぞれ異なります。

建物:固定資産税評価額

建物が存在する場所の地方自治体が、個別の建物ごとに固定資産税評価額を定めます。
新築からの経過年数で評価額は下がっていきます。

築30年を超える木造住宅では、評価額が0円になることもあります。
つまり、古い家の場合、「建物だけを見れば価値がない」というのは、ある意味正解です。

▸土地:路線価または倍率方式

土地の相続税評価は、都市部や市街化区域では、国税庁が公表する「路線価」に基づいて評価されます。
   →詳しくはこちらのコラム「ご自分の土地の評価は 『路線価』のキホン」

この路線価は、土地の「場所」や「接道状況」「形状」によって定められていて、建物の状態とは関係がありません。

たとえば、目黒区の住宅街にこのような古家つき土地があるとします。
 ⚫︎ 路線価:1㎡あたり80万円
 ⚫︎土地面積:100㎡

この場合、建物がボロボロで評価額がほぼゼロだったとしても、土地だけで8,000万円の評価になります。
 土地の相続税評価額=路線価80万円×土地面積100㎡=8,000万円

特に東京では、この路線価が2025年には8.1%の上昇となり、全国平均の3倍の伸びとなりました。

建物がボロボロだったとしても、路線価が上昇して相続税評価額が高くなれば、相続税の負担も大きくなってしまうというわけです。

一方、路線価が定められていない地域では、相続税評価は「倍率方式」で決まります。
倍率方式は自治体が定める倍率を、土地の固定資産税評価額にかける方法です。

土地の形や条件で変わる「補正率」にも注意

さて、土地の相続税評価は、「路線価×土地面積」だけでは決まりません。
正確に計算するには、土地の形状や接道状況による「補正」をすることが必要です。

この補正については、かなり細かく「補正率」が定められています。
たとえば、このような補正があります。
 ⚫︎ 奥行価格補正率:土地の奥行きが長すぎる、または短すぎる場合に減額
 ⚫︎ 間口狭小補正率:道路に接する幅が狭い場合に減額
 ⚫︎ 不整形地補正率:三角形、旗竿地など土地の形が整っていない場合に減額
 ⚫︎ がけ地補正率 :傾斜地や崖地のある土地の場合に減額
 ⚫︎ 側方路線影響加算率:2つ以上の道路に接している土地の場合に加算

   →国税庁の「調整率表」

旗竿地と呼ばれる、道路に面する部分が細長く、奥に広い土地のケースでは、人気エリアにあるのに、評価額が通常よりも2割〜3割下がることもあるようです。

ただし、補正が適用されるかどうかの判断や計算はかなり専門的です。

自己流で評価してしまうと、税務署とのトラブルや納税額の過不足を招く恐れがあるので、相続を専門とする税理士など専門家に相談することをおすすめします。

古家を放置するとリスクが・・

ここで注意したいのが、築年数の古い家を相続したものの、放置してそのままにしていると、さまざまな問題が起きるということです。

❶ 管理コストと劣化リスク

誰も住まず、「空き家」の状態で放置すれと、建物は急激に傷みます。
屋根の雨漏りや外壁などが壊れて周辺に飛散して近隣に迷惑をかけることになるかもしれません。

また草ぼうぼうになった庭などから害虫が発生したり、悪臭が広がるといったリスクもあります。

一方、空き家は火災や不法侵入といったリスクも抱えることになります。
人が住んでいない建物は通常の火災保険に加入できないという問題も抱えます。

❷ 相続税はしっかりかかる

さきほど見たように、「建物は価値ゼロ、でも土地は高評価」となると、結果として相続税の負担が大きくなります。

活用していない不動産に高額な相続税がかかるといった状況になってしまうかもしれません。

❸ 売却や再建築のハードル

さらに、相続した家についてよく調べておくことも大切です。
状況によっては、いざ売ろうとしてもハードルが高くなることがあるからです。

たとえば、このような状況です。
 ⚫︎ 再建築不可だった(接道義務を満たしていない場合などです)
 ⚫︎ 建築制限のある用途地域だった

活用しよう、売却しようとしても、建て替えができない、なかなか売れない、というケースは意外とあります。
古家がどのような状況なのかについては、できれば、相続が発生する前から調べておきたいところです。

相続対策としてできること

「路線価の上昇によって、思ったよりも相続税が高くなってしまった」
そんな心配があるかもしれません。

相続税の負担軽減、または事前にできる相続対策には次のようなものがあります。

相続から3年以内に空き家を売却する

譲渡所得の特例として、「空き家の3,000万円特別控除」という制度があります。
1981年以前に建設された家屋(旧耐震基準)が対象で、相続人が解体して更地にして売却するなどの要件を満たすと、譲渡益から3,000万円を控除できます。

ただし、相続開始から3年以内の年末までという期限などもあるので注意が必要です。
   →詳しくはこちらのコラム「相続空き家を売るなら3年以内がお得」

生前の土地整理

古家つき土地を将来的に使わないことがわかっているなら、元気なうちに売却することも選択肢となります。
早くから売却を検討することで、条件が悪い土地でも売却の道が開けるかもしれません。
また売却資金で別の不動産を購入するなど、さまざまな相続対策を講じられる可能性もあります。

一方、生前贈与も選択肢の一つです。
贈与税を軽減する制度を活用することで、相続税を含めたトータルの税負担を軽くすることができる余地があるかもしれません。

専門家による試算

税理士や不動産鑑定士に依頼し、相続の発生前に土地の評価を試算しておくことが、将来の手続きをスムーズに進めることにつながるかもしれません。

税負担を軽くする制度などが利用できるかどうかなど、複雑な要件があるので、適合するかどうか事前に知っておくことは大切です。

ただし、専門家への報酬がそれなりにかかることになります。


まとめ

都心部を中心に不動産の価格が上昇しています。路線価も上昇が続いています。
建物が古くて価値が低かったとしても、土地の相続税評価額が想像よりも大きな額になっているかもしれません。

「古い家だから相続税も大したことはないだろう」という思い込みが、盲点になっているかもしれないのです。

さらに、相続人が空き家を放置すれば、税負担だけでなく資産価値の目減りリスクにも直面します。

不動産相続について考え始めたら、土地の評価をできるだけ正確に把握して、必要な対策を早めに講じることが、ご家族みなさんの安心につながります。

「古家つき土地の相続」、今が考え始める時かもしれません。
「うちはどうだろう?」と思われた方は、路線価のチェックや事前の相談などを始めてみてはいかがでしょうか。

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