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登記の住所と現住所が違うときの対処法

「登記の住所と現住所がつながらなくて、手続きが進まないんです」
実際の相談で、こうした声をいただくことがあります。

相続登記や抵当権抹消、所有者の住所変更をしようとしたときに、登記簿に載っている古い住所と住民票の住所が一致しない・・・。
そんなケースは決して珍しくありません。特に何度も引っ越しをしていると、住民票だけでは過去の住所をたどれず、登記簿上の住所に結びつけられないことがあるのです。

このようなときに解決のカギになるのが「戸籍の附票」です。戸籍の附票には、その人の住所の履歴が記録されているので、登記簿の住所と現住所を結びつける証拠として活用できます。

ただし、慣れない方にとっては「どこで取得するのか」「どの書類が必要なのか」が分かりにくく、途中で面倒くさくなってしまうことも少なくありません。そんなときは専門家に相談することで、余計な手間や時間を省きながら、スムーズに進めることができます。

この記事では、登記の住所と現住所が違っている場合にどのように対処すればよいのか、その流れをわかりやすく解説していきます。


登記の住所が違うと困ること

住所が一致しないときに最も多いのは、相続登記でのトラブルです。たとえば、親が亡くなって実家を相続しようとしたとき、登記簿に記載されているのが30年前の住所のままというケース。こうなると、相続人が申請する登記に必要な「住所の同一性」が証明できず、手続きが前に進みません。

住宅ローンを完済したときも同じような問題が起きることがあります。本来であれば銀行からの書類を添えて抵当権の抹消登記をすれば済むはずなのに、登記簿の住所が古いままだと書類と一致せず、そのままでは申請できないのです。

ここで押さえておきたいのが、登記に関する2つの「義務化」です。

⚫︎ 相続登記の義務化(2024年4月〜)
 相続が発生したら3年以内に登記を行わなければなりません。怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年以前の相続についても同様に登記が義務付けられました。

⚫︎ 住所変更登記の義務化(2026年4月〜)
 所有者の住所や氏名を変更したら2年以内に登記を行う必要があります。こちらは5万円以下の過料の対象となります。2026年以前の住所や氏名の変更についても義務付けられています。スマート変更登記」というサービスを利用すると、無料で手続きをすることが可能です。
   →法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」

つまり、すでに始まっている相続登記に加えて、2026年からは住所変更登記も義務化されます。「古い住所のまま放置」というわけにはいかなくなるので注意しましょう。
登記の義務化の背景には、「所有者不明土地」をなくしたいという国の方針があります。詳しくはこちらのコラムをご一読ください。
   →「所有者不明土地」はなくなるか

なぜ住所がつながらなくなるのか

では、なぜ住所がつながらなくなってしまうのでしょうか。

分かりやすいのは、引っ越しを繰り返している場合です。転勤や結婚などで住まいを移すたびに住所は変わりますが、そのすべてが「住民票」に残っているとは限りません。住民票で証明できるのは原則、2つ前の住所までです。転出済みの住民票は多くの自治体で5年程度しか保存されないため、それを過ぎると廃棄されてしまい、過去の履歴がたどれなくなるのです。

「戸籍の附票」で解決する

こうした問題を解決するために役立つのが「戸籍の附票(ふひょう)」です。附票にはその人がどこに住んできたかという住所の異動履歴が順を追って記録されています。つまり「登記簿にはこの住所」「現在はこの住所」と示し、その間の履歴を附票で証明することで、登記の住所と現住所を結びつけることができるのです。

戸籍の附票は本籍地の市区役所・町村役場で取得できます。本人や代理人(配偶者や子など)であれば請求が可能で、窓口だけでなく郵送での取り寄せもできます。また、市区町村によっては、マイナンバーカード等を使ってコンビニでの取得にも対応しています。

総務省「戸籍附票のサンプル」

本籍地を移していると要注意

ただし、本籍地を移している場合は要注意です。戸籍の附票は本籍地ごとに作成されるため、本籍を動かすと住所の履歴が分断されてしまいます。結果として、登記簿の古い住所から現在の住所までをたどっていくことが難しくなるのです。

住所の履歴をどうつなげるか

実際に住所をつなげる作業は、次のような流れになります。

まず、現在の戸籍の附票を取得します。そこで履歴がしっかりと確認できればそれで済みますが、途中で住所が抜けている場合もあります。そのときは本籍を移す前の戸籍(=「除籍戸籍」)の附票、あるいは制度改製をまたいでいる場合には「改製原戸籍の附票」を取得する必要があります。

除籍の附票や改製原戸籍の附票は原則、本籍地を移す前の役所で取得します。

こうして住所の履歴を途切れなくつなげた書類を揃え、相続登記や住所変更登記、抵当権抹消登記の申請書に添付すれば、登記手続きが進められるのです。

ただし、除籍戸籍の附票は保存期間が限られており、5〜10年を過ぎると廃棄されてしまうため注意が必要です。こうなると独力ではかなり難しくなるので、専門家に相談することをおすすめします。

広域交付サービスについて

2024年3月から「戸籍証明書の広域交付サービス」が始まりました。これにより、戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍は全国どこの市区町村でも取得できるようになっています。相続登記の際にも必要となる被相続人の戸籍一式を集める手間が大きく軽減されました。

ただし、このサービスには限界もあります。「戸籍の附票」は広域交付の対象外であり、従来通り本籍地の役所でしか取得できません。したがって、「戸籍は広域交付、附票は本籍地」と整理して理解しておくことが大切です。

ありがちな落とし穴

実務でよくあるのは、「古い附票が保存期間を過ぎて廃棄されており、取得できなかった」というケースです。また、本籍を何度も動かしている方の場合は、複数の役所に請求をしなければならず、非常に手間がかかります。

所有者が複数いる場合は全員分の住所をつなげる必要があるため、必要書類が膨大になってしまうこともあります。

専門家に相談するメリット

こうした手続きは、知識のある人にとってはわかっていても、初めての方にとっては複雑に見えるものです。「役所に何度も足を運んだのに、まだ足りない書類があった」という声も珍しくありません。

専門家に相談すれば、必要な書類を正確に見極め、最短ルートで揃えるアドバイスを受けることができます。余計なストレスや時間をかけずに済むのです。

まとめ

登記簿の住所と現住所が違うと、相続登記や抵当権抹消、住所変更登記が進められません。また、相続登記や住所変更登記の義務化で、登記簿の住所と現住所を一致させることがますます重要となります。

解決のカギとなるのは「戸籍の附票」。住所の履歴を証明し、登記簿と現住所をつなげる役割を果たします。

ただし、本籍地を移したなどの事情によっては、さらに手間がかかり複雑になってきます。手続きに迷ったときは、無理に自分で抱え込まず、専門家に相談することが確実で安心です。

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