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マンション相続 「想定外」の落とし穴

親のマンション相続で「想定外」の税額に驚かないために

「親のマンションを相続するけど、建物は古いし、相続税は大したことないはず…」
と思って相続の手続きを進めてみたら、思いがけない評価額の高さに驚いた。こうしたケースがあるのです。

特に都市部のマンションを相続する場合、「土地の評価が低いはずだから税金も少ないはず」と思い込んでいると、落とし穴が待っていることがあります。

今回のコラムでは、マンション相続での評価の仕組みが変わったことで起きることと、今からできる対策についてわかりやすく解説します。


かつて注目された「タワマン節税」

かつて、相続対策として「タワマン節税」が注目されていました。

都市部のタワーマンション(タワマン)は市場価格が高い割に、相続税の評価額がかなり低く算出されていたからです。
これは、マンションの戸数で按分された土地部分の評価が小さくなる仕組みからでした。

マンションの評価額も他の不動産と同様に土地と建物部分を別々に算出したうえで、合算します。
土地については、路線価にそのマンションの敷地面積とマンションの持分をかけて算出します。
建物部分については固定資産税評価額となります。

戸数が多いタワマンなどの大型マンションは、一戸あたりの土地の持ち分が小さくなるので、相続税の評価額が低くなるというわけです。

一方、市場価格は建物の階数や築年数が考慮されるので、新しいマンションで高層階ほど高くなります。
国税庁の調査では、マンションの相続税評価額の平均は市場価格の43%程度と、戸建ての60%程度と比べても低くなっていました。
   →国税庁「相続税評価額と市場価格の乖離の実態」

例えば、1億円で購入したタワマンでも、相続税評価額は4,300万円ほどになるということになります。
こうしたことから、マンション、特にタワマンが相続対策として重宝されていたのです。

この仕組みを活用して富裕層が相続税の節税を行う事例が相次いだことから、国税庁も「さすがに不公平では?」と、数年前から見直しに着手していました。

その結果、2023年の税制改正で、マンションの相続評価額の仕組みが見直されました。

マンションの評価額が「補正」される

この税制改正で、居住用の区分所有財産の評価方法が変更されることになり、「区分所有補正率」が導入されました。
   →国税庁「居住用の区分所有財産の評価」

居住用の区分所有財産、つまりマンションの相続税評価額と市場価格の差を適正なものにするため、補正しようという考え方です。
この評価の仕組みや補正率はたいへん細かく、実際の計算は相続専門の税理士など専門家に任せたほうがよさそうです。

おおまかには、このようになりました。
・築年数が少ない(建物が新しい)ほど評価額が高くなる
・建物が高いほど評価額が高くなる
・所在する階が高いほど評価額が高くなる
・土地の持分が小さい(戸数が多い)ほど評価額が高くなる

これを見てもわかるように、タワマンの評価額が高くなる傾向にあるということがわかります。

一方、この評価の対象とならないマンションもあります。
・2階以下の低層マンション
・居住用以外のマンション(オフィスなど) などです。

「想定外だった」という落とし穴

いざ、相続が発生した際に、マンションの評価方法が変わったことを知らずに、タワマンで節税していたつもりになっていると、「非課税枠に収まるから相続税はかからないと思っていたのに‥」といった事態に陥ることがあるかもしれません。

マンションの評価額が上がると、相続税の課税対象になる可能性が高くなるからです。

相続税の納付は現金一括が原則です。
納付用の資金を慌てて準備しなければならないということにもなりかねません。
ひょっとしたら納税資金が足りないということにもなりかねません。

「まさか自分に相続税がかかるとは思っていなかった」
そんな状況にならないためにも、早めに備えておくことが大切です。

今からできる「備え」

マンション相続の「想定外」に備えるために、今からできることが3つあります。

① 評価額を試算する

マンションの相続税評価額の算出は複雑な仕組みになっています。

相続や不動産に詳しい税理士に任せて、評価額を試算しておくことで、想定外のリスクを避けるようにしましょう。

② 納税資金の準備

相続税が課税されそうなことがわかったら、資金の準備をしましょう。

生命保険などを活用した納税資金の確保という対策も検討できそうです。
   →「相続で生命保険が重宝されるわけ」

③ マンションをどうするか

相続後に親のマンションに住む予定がない場合は、「不動産の組み替え」など相続に備えた対策も選択肢になりるかもしれません。
   →「相続の秘策 不動産の組み替え」


マンション相続が不利になったわけではない

ただここで、重要なのはマンション相続が不利になったわけではないということです。

いままでフェアではなかった評価方法が是正されて、戸建てと同等となったといえるからです。

相続税の評価額の算出では、不動産が現金や預貯金に比べて有利なことに変わりはありません。
マンションにも小規模宅地等の特例など相続税の負担を軽減する制度が適用されます。

いずれにしても、早めに対策をすることで、相続に備えることが大切です。

【用語集】

路線価 小規模宅地等の特例

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